当店の富士宮やきそばは『美味しい』とよく言われる。だがそれは本当のことなのだろうか?
(また面倒くさいことを悩み始めたわね…)
実は“自分の作った料理を自分で食べてもあまり美味しく感じない現象”というのがあります。
私が作った富士宮やきそばを私が食べても「ふーん」くらいの感想しか湧きません。
ですが、カントクが作った富士宮やきそばを私が食べると「やべっ!ウマっ!」となるのです。レシピは同じなのに。
もしかして私の舌と頭がおかしいのかも…
悩んだ末、旅に出ることにしました。
「美味しい」と名高いご当地焼きそばを求めて。そしてそれが自店の富士宮やきそばを更に美味しくさせることに繋がると信じて。
こうして「究極の焼きそばを求めて」シリーズが始まるのです。
◇
今回訪れたのはこちらのお店です。
藤春食堂
秋田名物「横手やきそば」の代表格!
初回から超大物店が来たわね。
ここで横手やきそば(焼きそばじゃない)について簡単に説明しておきます。
①横手やきそば暖簾会に加入している製麺会社の作った麺(太くて真っ直ぐな角麺)を使用すること
②キャベツ、豚ひき肉を使用し、半熟の目玉焼きを乗せて福神漬けを添えること
③ソースはウスターソースがベースで各店オリジナルの味が工夫されている
②キャベツ、豚ひき肉を使用し、半熟の目玉焼きを乗せて福神漬けを添えること
③ソースはウスターソースがベースで各店オリジナルの味が工夫されている
上記は横手やきそば暖簾会のウェブサイトを参照にしました。
富士宮やきそばもそうですが、ご当地グルメを名乗るものにはきちんとしたレギュレーションがあります。
そこにはその土地に生きる人々が長い年月をかけて蓄積した知恵と工夫がギュッと詰まっているのです。
お店の前には「横手やきそば四天王」のステッカーが貼ってあります。
11年連続四天王とは!
店内はこんな感じです。
メニューは…「焼きそば」しかありません。
このこだわり!この自信!
しかも安い!
聞いてみると「並焼きそば」で女性1人前くらいの分量だとか。
その1.5倍量である「肉玉中焼きそば/550円」を注文しました。
なまはげについて調べながら待つこと10分。
人生初の横手やきそばに挑戦!
頂きます!
もぐもぐ…
麺は中太角麺、市販の麺よりも若干コシはありますが、富士宮やきそばほどではありません。
具は細かく切ったキャベツと豚ひき肉と目玉焼き。
シンプルな構成を甘めのウスターソースで軽く焼きあげています。
どこにも肩肘を張っていないけれど、脳の奥を刺激する懐かしい味。
土曜日の午後、友達の家に遊びに行った時にかーちゃんが出してくれたような味。
そんな感じです。
「こんな味わい始めてだ!」「ものすごい手間暇かけて仕込んでる!」という感動はありませんが、「焼きそばの原点ってやっぱこれだよね」という安心感があります。
後味残らずあっさりなのでぺろりと食べてしまいました。
なんだろう…舌というより日本人の心に訴えかけてくる味や…
これに比べて当店の焼きそばに心はあるんか?
食べ終わった後に考えたことは「味と心の両立について」でした。
昨今、身の回りには沢山の食材、調味料があります。そしてそれは流通の発達で容易に入手することが可能です。
お金と手間暇を掛ければ斬新で、舌に残り、見栄えも良く、美味しい、いわゆる『バズる料理』を作ることはそんなに難しいことではありません。
ですがそこに当店らしさがあるのでしょうか?当店にわざわざ来る価値が出せるのでしょうか?
残念ながらそうった目的で開発された料理は直ぐに飽きられてしまいます。
当店の向かう方向性は「単純な美味しさの追求」でも「ネット受けする料理の提供」でもありません。
「静岡の魂」を紹介することです。静岡の風土、歴史、そこに生きる人々を感じて欲しいのです。
今回食べた横手やきそばには横手に生きる人たちの魂を感じることができました。
私もそんな料理をご案内していくべきだと改めて思ったのでした。もちろんその上で美味しさの追求もしますけれど。
横手まで来て本当に良かった!
また行きましょう!
これからも私の究極の焼きそば探索の旅は続きます。